Paths for Researchers
ソウル神学大学校保育科 教授 玄正煥
幼研での大学院生活を振り返って
私は1989年幼研の博士課程の第1期生として入学し、1993年3月修了と同時に本国(韓国)に帰りました。4年間の幼研での生活は、人生のどの時期よりも私の価値観や研究者としての心構え、研究力などに最も影響を与えた時期だったと思います。 幼研での大学院生活を振り返ってみますと、何よりも先生たちの顔が浮かび上がります。私の指導教官であった祐宗先生の仕事への情熱と研究へのエネルギーは決して忘れることができません。懇親会の時に"ほうれん草をよく食べるように"と学生たちにおっしゃった森先生のお話は今も心に刻んでおり、うちの学生たちにもたまに心の戒めとして言っています。幼児保健学演習の授業では"あなたの話は何を言ってるのか全然わからない"と言われたことで、清水先生はちょっとコワイなという感じもありますが、お会いしたいですね。子どもの社会性について共同研究もさせていただき、広島へ帰る時の汽車の中でいろいろな話をしながらまるで友だちのように私に接してくださった山崎先生に感謝の気持を感じています。いつも心優しく接してくださった鳥光先生や井上先生にもありがたく思っています。同期である湯澤先生と七木田先生の卓越な研究力にはいつも感心し、私はいくら努力すればあ~なれるかなと思ったこともあります。今考えてみると、当時先生たちをはじめ、同期や後輩たちの支えなしでは日本での博士課程を修了することができなかったと思います。その恩返しをしなきゃと思うこのごろです。韓国へいらっしゃる時は是非ご連絡ください。有益な訪問になるようにできるだけの協力をします。
韓国での生活
1993年3月に博士課程の修了と同時に韓国へ帰国し, 非常勤4年の過程を経て97年の9月に今の学校(ソウル神学大学校)に就きました。学校の歴史は2011年に開校100年になるくらい割合と長いですが、その規模は8つの学科と大学院を含めて4千人の学生を越えない小さいです。私の所属している保育科は280人の学生(一学年70人)がおり、ほとんどの学生は卒業後保育士を目指して勉強しています。私の担当科目は、心理学概論、幼児心理学、児童臨床心理学、カウンセリング心理学などを主に教えています。最近の学生たちは児童臨床に関心を持ち、卒業後は保育士以外に児童臨床心理士になりたがっている人も多くなっています。
松山東雲女子大学人文科学部 講師 三宅英典
幼研での大学生活を振り返って
私は,博士課程前期から広島大学へ入学し,幼年教育研究施設 (幼研) にはそれから5年間在籍しました。他大学の学部時代には幼児教育を専攻しており,大学院から幼児心理学という領域に足を踏み入れました。そのため,当初は,心理学について右も左もわからないところからのスタートとなり,それから5年間,杉村伸一郎先生には,心理学という学問を通して子どもたちを捉える視点や方法について懇切丁寧にご指導いただきました。
他方,幼研は,幼児教育学に所属する先輩・同期・後輩とも交流が盛んで,そのうちの1つに,互いの研究テーマについて議論を行う合同ゼミ (通称,総合特研) があります。総合特研では,心理学とは異なるアプローチで子どもを見つめる視点や考え方について多くの学びがありました。また,幼研では附属幼稚園との交流も盛んに行われています。そのため,実際に子どもたちと関わる機会が多く,幼児を対象とした研究を行ううえで,常に目の前の子どもたちを意識することができました。
このように,語り出せばキリがありませんが,幼研では本当に多くの経験をしました。このような経験も,これまで幼研が積み重ねてきた歴史あってのことなのだろうと感じています。願わくは,後輩にもこのような経験を積極的にしていってほしいと思います。
現在の職場に活かされていること
私は現在,松山東雲女子大学人文科学部で講師をしています。講義は,発達心理学,保育内容 (人間関係),保育実習指導などです。私が所属する心理子ども学科では保育士・幼稚園教諭を目指す学生が多く,彼女たちの指導には,幼研や附属幼稚園での経験が活かされています。
また,自らが研究者として働く姿勢には,幼研の先生方がモデルケースとして活かされています。研究活動でもそうですが,特にゼミ生への卒業論文指導では,保育実践や子どもの発達に関する論文を通して,学生は頭を悩ませながらも好奇心旺盛に,あれやこれやと試行錯誤しています。こんな時,「幼研の先生はどんな指導をしてくれただろう」「幼研の先生ならなんて言うだろう」と考えています。まだまだ分からないこともたくさんありますが,日々精進していきたいと思います。